2020.05.27
- デジタル・フォレンジックス
16.デジタル・フォレンジックス(各論)「携帯電話」
LXの深山です。
スマートフォンが普及した昨今では、身の回りではあまり見かけなくなった携帯電話(いわゆるガラケー)ですが、企業の貸与端末としては現在でも現役であり、たまにデータ保全・解析・復元の相談が寄せられます。そこで、今回は携帯電話に関するデジタル・フォレンジックスについて解説したいと思います。
携帯電話からスマートフォンへ
私が、証券取引等監視委員会に所属して犯則調査に携わっていたころには、携帯電話が対象となることも多く、法執行機関専用モバイルフォレンジックソフトを使用したり、専用ソフトが対応していない場合には市販のバックアップソフトや端末ごとのバックアップ機能を使用したりして保全していました。その後、携帯電話からスマートフォンへのシフトが進み、ニーズが減少してきたため、モバイルフォレンジックソフトもスマートフォンをメインとするようにシフトしてきました。とはいえ、企業では携帯電話のニーズは根強く、今でも一定割合で利用されているようです。
携帯電話はスマートフォンと比較してメモリの容量が少ないため、表示できる電話帳、発着信履歴、SMSなどのメールは限定的なものとなり、携帯電話のバックアップ機能から抽出できるデータ量は、各メーカーがバックアップ機能として保証しているデータ件数に依存してしまいます。バックアップ機能では得られなかった、削除されたデータやデータの復元がどうしても必要なケースでは、「チップオフ」という手法が利用されます。「チップオフ」とは、「プリント基板から記憶素子を剥がし取って、記憶素子の端子から直接データを読み出す手法」(高橋郁夫・梶谷篤・吉峯耕平・荒木哲郎・岡徹哉・永井徳人「デジタル証拠の法律実務Q&A」93頁(日本加除出版、2015年)参照)のことです。
この手法を使う場合には、携帯電話を分解し、記憶素子を基盤から剥がして行う必要があるため、二度とその携帯電話を使うことができなくなります。また、記憶素子を剥がす際に何らかの損傷が発生した場合には、データの復元が不可能となってしまうリスクもあるという点にも注意が必要です。
このような「チップオフ」を実施するには高度な技術が必要となるのですが、デジタル・フォレンジックスに従事する方には、各種トレーニングも提供されており、現在でも技術の向上が図られています。
本記事の監修者
顧問 公認不正検査士 経営修士(MBA)・DCM修士 / Office Miyama代表
深山 治OSAMU MIYAMA
- 専門分野
- 会計・財務アドバイザリー, デジタル・フォレンジックス
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スマートフォンが普及した昨今では、身の回りではあまり見かけなくなった携帯電話(いわゆるガラケー)ですが、企業の貸与端末としては現在でも現役であり、たまにデータ保全・解析・復元の相談が寄せられます。そこで、今回は携帯電話に関するデジタル・フォレンジックスについて解説したいと思います。
携帯電話からスマートフォンへ
私が、証券取引等監視委員会に所属して犯則調査に携わっていたころには、携帯電話が対象となることも多く、法執行機関専用モバイルフォレンジックソフトを使用したり、専用ソフトが対応していない場合には市販のバックアップソフトや端末ごとのバックアップ機能を使用したりして保全していました。その後、携帯電話からスマートフォンへのシフトが進み、ニーズが減少してきたため、モバイルフォレンジックソフトもスマートフォンをメインとするようにシフトしてきました。とはいえ、企業では携帯電話のニーズは根強く、今でも一定割合で利用されているようです。
携帯電話はスマートフォンと比較してメモリの容量が少ないため、表示できる電話帳、発着信履歴、SMSなどのメールは限定的なものとなり、携帯電話のバックアップ機能から抽出できるデータ量は、各メーカーがバックアップ機能として保証しているデータ件数に依存してしまいます。バックアップ機能では得られなかった、削除されたデータやデータの復元がどうしても必要なケースでは、「チップオフ」という手法が利用されます。「チップオフ」とは、「プリント基板から記憶素子を剥がし取って、記憶素子の端子から直接データを読み出す手法」(高橋郁夫・梶谷篤・吉峯耕平・荒木哲郎・岡徹哉・永井徳人「デジタル証拠の法律実務Q&A」93頁(日本加除出版、2015年)参照)のことです。
この手法を使う場合には、携帯電話を分解し、記憶素子を基盤から剥がして行う必要があるため、二度とその携帯電話を使うことができなくなります。また、記憶素子を剥がす際に何らかの損傷が発生した場合には、データの復元が不可能となってしまうリスクもあるという点にも注意が必要です。
このような「チップオフ」を実施するには高度な技術が必要となるのですが、デジタル・フォレンジックスに従事する方には、各種トレーニングも提供されており、現在でも技術の向上が図られています。
本記事の監修者
顧問 公認不正検査士 経営修士(MBA)・DCM修士 / Office Miyama代表
深山 治OSAMU MIYAMA
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